三津田信三編「呪いの☒☒」感想レビュー|6編の呪いを★評価つきで読み比べ【ネタバレなし】

book02 ホラー・ホラーミステリー

本棚の住人、Konohaです。

以前の[購入記録]でもご紹介したホラーアンソロジー「呪いの☒☒」、読み終わりました。

このタイトルの「☒☒」には実はちゃんとした意味があります。「呪いの○○」というテーマのもと、各執筆者がそれぞれ自分の取り上げる怪異の対象を○○に入れて書き下ろすアンソロジー、という企画なんです。交換日記、古書店、丑の刻参り……6人の書き手が、まったく異なる「呪いの器」を手に短編ホラーを紡いだ一冊です。

三津田信三さん・澤村伊智さんの名前を見て迷わずカートに入れた本でしたが、読んでみると6編それぞれの怖さの質がまったく違っていて、読み比べる楽しさもありました。では各編の感想をお届けします。

日常に潜む暗闇から滲んだ〈呪い〉。気づかぬうちに〝それ〞は、あなたをあちら側に引きずり込む。とある地方都市に蔓延る穢れ、女子中学生の交換日記に潜む怨念、無人古書店に集まる忌まわしの記憶、模倣作品にかけられた呪詛、名家に死を招く丑の刻参り、平凡な社員研修に込められた悪意……。もう後戻りはできない。六つの呪いの扉が今開く――。

Amazon.co.jp: 呪いの☒☒ (幻冬舎文庫) 電子書籍: 三津田信三, 澤村伊智, 芦花公園, 背筋, 北沢陶, 上條一輝: Kindleストア
Amazon.co.jp: 呪いの☒☒ (幻冬舎文庫) 電子書籍: 三津田信三, 澤村伊智, 芦花公園, 背筋, 北沢陶, 上條一輝: Kindleストア

呪いは明るく輝いて/上條一輝

市役所の職員として働く主人公は、街の異変に気づき始める。原因不明の事故が相次ぎ、店が次々と閉まり、住民が「幽霊を見た」と言い残して市外へ引っ越していく。やがて調査の先に浮かび上がってきたのは、山の神社を壊して進められた「グリーンシティ・プロジェクト」の存在だった——。

**評価:★★★★☆**

1編目から好みのタイプの終わり方でした。救いのないバッドエンドなのですが、後味の悪さがどこかすっきりしているというか——こういう幕の引き方、個人的にとても好きなんです。

グリーンエネルギーや電気自動車という現代的なモチーフと、山の神社が沈めていた穢れが結びついていく構図が秀逸でした。「環境に優しい」はずのプロジェクトが引き金になっているというのが、じわじわと怖い。気づいたときにはもう遅い、という読後感もまさに私の好みです。

呪いの交換日記/北沢陶

女子高生3人組が手に入れた交換日記。書き進めるうちに、誰も書いた覚えのない文章やイラストが紛れ込んでいることに気づく。そして、どうやらこの日記は最後まで書き続けなければならないらしい——。ページをめくるたびに増していく不気味な予感の先に、取り返しのつかない結末が待っている。

**評価:★★★★☆**

これもバッドエンドで、読後じわじわと怖さが滲んでくるタイプの話でした。

「日記を最後まで書き続けないといけない」というルールの設定が絶妙で、逃げられない感じがじわじわと怖い。そして日記に現れるイラストが、やがて現実の出来事と呼応し始める——その仕掛けに気づいた瞬間、ぞくっとしました。

読み終えてから「ああ、そういうことだったのか……」と腑に落ちる感覚もあって、読後に最初のページに戻りたくなる一篇です。日記の中に閉じ込められた何かが、ずっとそこで待ち続けているような余韻が残ります。

ほらあな/澤村伊智

誰もいないはずの無人古書店。そこに積まれた古い本の中に、ひっそりと呪いの文字が落書きとして刻まれていた。記憶と呪詛が重なり合う場所で、気づかぬうちに——。

**評価:★★★☆☆**

大好きな澤村伊智さんの作品だったので期待していましたが、6編の中では少し印象が薄めでした。ただ、最後にぞくっとさせる締め方はさすがです。

古書店という舞台に宿った呪いの記憶、というモチーフは好みでした。詳しくはネタバレになるので書けませんが、「この話自体が呪いの器になっているのでは?」という感覚を覚えた読者は、きっと私だけではないはず。

劣化コピー/背筋

模倣作品にかけられた呪詛。複数の視点が交差しながら、人の恨みと憎しみが生み出す呪いの正体が少しずつ明らかになっていく。

**評価:★★★★☆**

視点がころころと切り替わる構成で、読み始めは少し混乱しました。それでも読み進めるうちに、その構成自体がこの話の怖さを支えていることがわかってきます。

いわゆる「ヒトコワ」の話で、超常的な怖さというよりも人間の恨みの深さがじわじわと迫ってくる怖さです。「呪い」と聞くと怪異を想像しがちですが、一番怖いのは人間なのかもしれない——そんなことを考えながら読んでいました。

壱本樹様/三津田信三

嫁候補の3姉妹が我こそはと激しく争う壱本樹家。その家に身を置く「私」がある夜目にしたのは、裏山のご神木に藁人形を打ち付ける人影だった——暗くて、怖くて、顔は確認できなかった。そして翌朝、3姉妹のひとりが死んだ。いったい誰が——。

**評価:★★★★★**

6編の中でダントツで怖かったです。

読みながら、何度も「見なければよかった」と思いました。丑の刻参りを目撃してしまった「私」が、そのことを黙って抱えているしかないあの感じ——暗

くて顔が見えなかったから、なおさら怖い。そして目撃した直後に人が死ぬ。また見てしまう。また死ぬ。「残りの一人がやったに違いない」と思い始め

たころには、もうページをめくる手が止まりませんでした。

その「残りの一人」まで死んでしまったとき、頭の中で何かがぐるぐると回り始めて——。

落ちを読んだ瞬間、背筋がぞくっとしました。すぐに最初のページに戻って読み返したくなる、そういう種類の怖さです。三津田信三さんの文章には、読

者を話の中に引きずり込む力があると改めて感じました。この一篇だけでも読む価値があると思います。

しばらくゆっくり休んでください/芦花公園

平凡な社員研修に込められた、誰も気づかない悪意。日常の隙間に潜む呪いは、じわりじわりと侵食してくる。

**評価:★★☆☆☆**

正直に言うと、6編の中でいちばん難しかったです。「呪い」の要素がどこにあるのかが私にはうまく読み取れず、怖さよりも「どういうことだろう?」という疑問が先に立ってしまいました。

私の読み取り方が浅かっただけかもしれないので、感度の鋭い方には違って見えるのかもしれません。

まとめ

6編それぞれに「呪いの器」があって、怖さの質がまったく違う——それがこのアンソロジーの一番の面白さだと思います。

特に印象に残ったのはやはり三津田信三さんの「壱本樹様」。純粋な怖さという意味では6編の中でひとつ抜けていました。バッドエンドの後味が好きな方には「呪いは明るく輝いて」と「呪いの交換日記」の2篇もぜひ。

ホラーが好きで、かつ読み比べの楽しさも味わいたい方には特におすすめの一冊です。

Amazon.co.jp: 呪いの☒☒ (幻冬舎文庫) 電子書籍: 三津田信三, 澤村伊智, 芦花公園, 背筋, 北沢陶, 上條一輝: Kindleストア
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購入時の紹介はこちらもどうぞ。

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