本棚の住人、Konohaです。
梅雨の季節が近づいてきましたね。じめじめした空気の中でホラー小説を読むのが、じつは密かな楽しみだったりします。今月は信頼できる作家さんの新刊がいくつも重なって、ホラー好きとしてはとても嬉しい6月になりそうです。
今回は澤村伊智さんの極上恐怖短編集、三津田信三さん×小田雅久仁さんという最強コラボのホラー競作、横溝正史ミステリ&ホラー大賞で史上初の三冠を獲得した大正時代の霊ホラー、土地に根ざした民俗系怪異談、そして静かな町が地獄に変わるホラーまで、5冊をご紹介します。
怪談小説という名の小説怪談/澤村伊智
高速道路を走る、逃げ場のない車内の恐怖体験「高速怪談」、再開発されたリゾートホテルの奇妙な風習「こうとげい」、最も怖いと噂される、存在しない短編「涸れ井戸の声」、おぞましい死をもたらす化け物を狩る「すしゃかき」を取材したルポ「ノンフィクション」など、全8編を収録。「小説」で「怪談」を読む楽しさが味わえる。不穏さを増す状況に背筋が凍り、想像もしない結末に息を呑む。澤村伊智が放つ、極上の恐怖短編集!
(角川ホラー文庫 / 1,056円 / 2026年6月16日頃発売)
澤村伊智さんの新刊というだけで、即読みたい本リストに入れました。これはもう条件反射です。
「怪談小説という名の小説怪談」というタイトルからして意味深で、「小説」と「怪談」の境界を揺さぶってくる気配がします。「最も怖いと噂される、存在しない短編」というあらすじの一文が特に不穏で……「存在しない短編」って、どういうことなんだろう……と気になり始めたら止まりませんでした。
「不穏さを増す状況に背筋が凍り、想像もしない結末に息を呑む」という紹介文、信じています。澤村さんの短編はいつも読み終えた後にじわじわと恐怖が這い上がってくるような感覚があって、そのぞくっとする読書体験がたまらないんです。

最恐ホラー 深夜の残業/三津田信三・小田雅久仁
1テーマに2人、12作。全6シリーズ。第五弾は、三津田信三×小田雅久仁。テーマは「深夜残業」。 三津田信三「入稿の一夜」——「メメント・モリ」とは「死を想え」という意味だ。知り合いの編集者が、そのテーマ企画に携わったときの恐怖を打ち明けた。編集作業中に暗澹たる気持ちに囚われた彼を襲…
(講談社 / 990円 / 2026年6月24日頃発売)
三津田信三さんと小田雅久仁さん、この二人の名前が揃っているだけで信頼感が違います。「最恐ホラー」シリーズは2人の作家が同じテーマで競作するスタイルで、同じ「深夜残業」というテーマをそれぞれがどう料理するのかが楽しみです。
三津田さんの「入稿の一夜」では、「メメント・モリ」つまり「死を想え」というテーマを帯びた企画に関わった編集者が暗澹たる気持ちに囚われる……という導入からして、もうぞくっとします。深夜に一人で仕事をしている状況というのは、理由もなく少し怖いですよね。その状況に作家・三津田信三が切り込んでくるとなれば、どんな恐怖が待っているのか期待と怖さが半々の気持ちです。

をんごく/北沢 陶
第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞 史上初の三冠受賞作! 大正時代末期、大阪船場。画家の壮一郎は、妻倭子の死を受け入れられずにいた。未練から巫女に降霊を頼んだがうまくいかず、「奥さんは普通の霊とは違う」と警告を受ける。巫女の懸念は現実となり、壮一郎のもとに倭子が現われるが、その声や気配は歪なものであった。倭子の霊について探る壮一郎は……
(角川ホラー文庫 / 968円 / 2026年6月16日頃発売)
「史上初の三冠受賞作」という肩書きに加えて、「奥さんは普通の霊とは違う」という一文が刺さりました。
降霊に失敗して、それでも何かが現れた——でも、それは本当に妻なのか? 「声や気配は歪なものであった」という描写が、単純な幽霊譚ではない何かを予感させます。理性では説明できない、歪んだ存在の恐怖というのが、私が一番ぞくっとするタイプのホラーで、「をんごく」というタイトルの響きからしてすでに不気味で、それもポイント高いです。
大正時代の大阪船場という舞台設定も独特で、時代の空気感ごと味わえそうです。どんな恐怖が待っているのか、期待と少しの怖さを抱えながら読みたいですね。

おん 土俗奇譚/烏目浩輔
しきたり、ならわし、信仰、習俗、歴史ーーその土地に古くから根ざしてきたモノに纏わる奇妙で空恐ろしい話を蒐集した土俗系怪異談!
(竹書房怪談文庫 / 880円 / 2026年6月29日頃発売)
「土俗系怪異談」という言葉を見た瞬間に、これは読まなければと思いました。しきたりや習俗、その土地に根ざしてきたものへの恐怖というのは、理性では説明がつかないぶん、どこか逃げ場がない怖さがあります。
民俗ホラーが好きな方にはたまらない一冊になりそうです。「奇妙で空恐ろしい話を蒐集した」という紹介文も、ただ怖いだけでなく、何か奇妙な後味が残るタイプの怪談が並んでいる予感がして楽しみです。880円とお手頃な価格なのも嬉しいです。
どんな「土地のモノ」に出会えるのか、今から楽しみです。

忌み児の町/阿泉 来堂
高原市葦根町に暮らす高校生の霧山誠一は、プリントを届けるために訪れた戸口で、別人のように変わり果てた同級生の沙織を目にする。町で続発することとなる怪事の、それは先触れのひとつに過ぎなかった。甘く濃厚に漂う蠱惑的な香り。キッチンに散乱する肉の空きパック。「最近この町は、何かおかしい……」。少数の住民たちの疑念が確信となるとき、日常世界は地獄に一変する。
(創元推理文庫 / 1,100円 / 2026年6月11日頃発売)
「別人のように変わり果てた同級生」から始まる物語、というだけでもう十分不気味なのですが、「甘く濃厚に漂う蠱惑的な香り」「キッチンに散乱する肉の空きパック」というこの二つの描写が並んでいるのが、絶妙に嫌な感じでたまりません。
「日常世界は地獄に一変する」という紹介文の言葉が、的確すぎて怖いです。最初はごく普通の高校生の話として始まって、じわじわと何かがおかしくなっていく展開が想像できて、その「気づいたときには手遅れ」感がぞくっとします。

そのほかの6月ホラー新刊
5選には入れられなかったけれど、気になった作品もまとめておきます。
**最恐ホラー 廃墟の映画館**(真藤順丈/梨)/講談社・1,045円
「最恐ホラー」シリーズ第四弾は真藤順丈×梨。「廃墟の映画館」という舞台設定が嫌な感じで気になる。

**東西線怪談**(深津さくら/青柳碧人ほか)/竹書房怪談文庫・880円
地下鉄東西線を舞台にした怪談アンソロジー。通勤電車で読んだら後悔しそう。

**怪水 みずのこわいはなし**(西浦和也/ファンキー中村)/竹書房怪談文庫・825円
水にまつわる怖い話を集めた一冊。夏前に読むには丁度いい怖さかもしれない。

**このホラーがすごい!2026年版**(『このミステリーがすごい!』編集部)/宝島社・899円
話題のホラー作品をまとめたガイドブック。次に読む一冊を探すのに便利。

まとめ / おわりに
今月のホラー新刊は、信頼の澤村伊智さんから初めて読む作家さんまで、バラエティ豊かな5冊になりました。怪談短編集、競作ホラー、大正時代の霊ホラー、民俗系怪異談、日常崩壊ホラーと、並べてみると本当にホラーというジャンルの懐の深さを感じます。
新しい出会いがどんな読書体験をもたらしてくれるのか、今から楽しみです。読了した作品は順次レビューしていきますので、またブログに遊びに来ていただけると嬉しいです。
6月のミステリー新刊記事もあわせてどうぞ。

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