本棚の住人、Konohaです。
「ぼぎわんが、来る」を読んで澤村伊智ワールドに足を踏み入れた方、あるいはまさに「比嘉姉妹シリーズってどれから読むの?」と気になっている方——今回はそんな方に向けて、シリーズ全10作の読む順番と各作品の見どころをご紹介します。
私がこのシリーズを読み始めたのは2025年の初め。まず心をつかまれたのが、「ぼぎわん」という言葉でした。意味が分からないのに、なぜか不気味さが染み出してくる。「ずうのめ」も「ししりば」も「などらき」も——このシリーズの怪異の名前は、意味の分からなさそのものが怖さになっていると思います。
読み進めるうちに、もうひとつ好きなところに気づきました。怖いのは怪異だけじゃない、ということです。人間の弱さや醜さが作り出したすきまに怪異が入り込んでくる——そのすきまを作っているのが他ならぬ人間自身という設定が、単純なホラーを超えた深みを生み出しています。気づいたら止まらずシリーズを読み進めてしまい、2025年末にはほぼ全作を読み終えていました。
今回はそのシリーズをまるごと振り返って、読む順番と各作品の見どころを整理してみます。
比嘉姉妹シリーズとは?
比嘉姉妹シリーズは、最強の霊媒師・**比嘉琴子**とその妹・**比嘉真琴**を軸に、様々な怪異に挑む物語です。
琴子は圧倒的な霊的能力を持ちながらも謎の多い存在として描かれ、真琴はより等身大のキャラクターとして読者の共感を誘います。そして真琴のパートナー・**野崎昆**(オカルトライター)が謎解きや調査を担う役割として各作品に登場し、この三人の関係が作品ごとに少しずつ深まっていく構造があります。
各作品は独立した怪異・事件を扱っていますが、シリーズを通じて比嘉家という一族の歴史が少しずつ明かされていきます。長編・短編集・中篇集と形式も多様で、2026年6月時点で前日譚を含む全10作が刊行されています。
読む順番について
まず**必ず第1作「ぼぎわんが、来る」から始めることをおすすめします**。
琴子・真琴・野崎昆というシリーズの核となるキャラクターたちがどんな人物なのかを最初に把握しておくことで、以降の作品がぐっと楽しみやすくなります。第1作から読まずに途中から入ると、キャラクターへの理解が後回しになってしまうので、順番どおりに読むのがベストです。
第1作を読んだあとは、**基本的に刊行順に読んでいくのがおすすめ**です。短編集にはシリーズのキャラクターを深掘りする内容が含まれているので、前後の長編を読んでから手に取ると、より一層楽しめます。
「まず長編だけ読んでみたい」という方は、長編4作(ぼぎわんが、来る → ずうのめ人形 → ししりばの家 → ばくうどの悪夢)を先に読んでから短編集に戻る読み方もできます。ただ、短編集には「あのキャラクターのその後」が描かれるエピソードも多いので、刊行順が一番自然な読み方だと思っています。
**澤村伊智・比嘉姉妹シリーズを初めて読む方へ。まずはこの1冊から。**
迷ったら、まず『ぼぎわんが、来る』から始めてみてください。これ1冊で、このシリーズがどんな世界観なのかが体感できます。

各作品紹介(刊行順)
第1作:ぼぎわんが、来る(長編・2015年)★★★★★
幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の怪我を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた”ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか?
第22回日本ホラー小説大賞受賞作であり、映画「来る」(中島哲也監督)の原作にもなった、シリーズの入り口となる長編です。
3つの視点から語られる構成で、視点が変わるたびに「同じ出来事がこう見えていたのか」という驚きがあります。そして読み進めるうちに気づくのが、このシリーズの核心です。怖いのは怪異だけではない——登場人物たちが抱える弱さ、家族への向き合い方の歪み、見栄、逃げ、そのすきまに「ぼぎわん」が入り込んでくる。読み終わってもしばらく、「怖いのは怪異か、それとも人間か」という問いが頭から離れませんでした。タイトルの「ぼぎわん」という言葉そのものも、意味が分からないからこそ怖い——このシリーズの魅力がすべて詰まった1冊です。
**こんな方に:** ホラー×ミステリーを初めて読む方。映画「来る」が気になっていた方に。
怪異と人間の関係を描くこのシリーズの本質が、ここに詰まっています。1作目を知らずに2作目を読んでも楽しめますが、理解の深さがまったく違います。

第2作:ずうのめ人形(長編・2016年)★★★★
オカルト雑誌で働く藤間は、同僚から都市伝説にまつわる原稿を託される。それは一週間前に不審死を遂げたライターが遺したものらしい。原稿を読み進め「ずうのめ人形」という都市伝説に触れた時——怪異が、始まる。
「読んだら死ぬ」「知ったら感染する」という呪いの連鎖を軸にした、シリーズ第2長編。
「読んだら死ぬ」「知ったら感染する」という呪いの中で、真琴たちが調査を続けるのは、誰かを助けるためです。危険を承知で原稿に向き合い続ける真琴たちの姿に、じんわりとした温かさを感じました。
物語の核心は、原稿の内容が実際の出来事だと分かりながらも、「ずうのめ人形」の話は作り話と判明するのに、なぜか現実に呪いが起きているというちぐはぐさにあります。この矛盾をどう解くのかを追ううちに、原稿の内容そのものにもミステリー的な仕掛けがあることが分かります。ラストで「そういうことだったのか」と驚くと同時に、人間の醜さがじわりと浮かび上がってくる構造が本当によくできていました。ホラーと謎解きが鮮やかに噛み合った、シリーズの中でも特に好きな1冊です。
**こんな方に:** 「リング」系の呪いものが好きな方。1作目を読み終えたら間を置かずに続けて読んでほしいです。
1作目を読んだら、間を置かずにこの2作目まで読んでください。シリーズの面白さがさらに加速します。

第3作:ししりばの家(長編・2017年)★★★★
夫の転勤先の東京で幼馴染の平岩と再会した果歩。しかし招かれた平岩家は、不気味な砂が散る家だった。怪異の存在を訴える果歩に異常はないと断言する平岩。はたして本当に、この家に「怪異」は存在するのかーー。
比嘉姉妹シリーズ第3長編。今度の舞台は、日常に入り込む怪異です。
山村でも孤島でもなく、ごく普通の東京の一軒家が舞台というのが、また違うリアリティを生み出しています。「おかしいのはこの家なのか、それとも自分なのか」という問いが物語の核に置かれていて、怪異の存在をめぐる主人公と周囲との認識のずれが、じりじりと不安を掻き立てます。シリーズ中でも特に日常感が強い怖さを持つ作品で、読んだあとしばらく「砂」が気になってしまいました。
**こんな方に:** 日常に忍び込む怖さが好きな方。「この家、本当に大丈夫なのか」という心理的恐怖に弱い方に。
普通の家が怖くなる、そういう読後感があります。短編集に入る前に必ず読んでおきたい1冊です。

第4作:などらきの首(短編集①・2018年)★★★★
雨の日にだけ、体育館に幽霊が出るーー。小学六年生の美晴は、学校に伝わる心霊めいた噂どおりに体育館のキャットウォークから飛び降りる白い少女を目撃する。白い少女の正体は何か、なぜ彼女は飛び降りるのか。姉・琴子に対抗するため、美晴は真相究明に挑むが——。
シリーズ初の短編集。第72回推理作家協会賞短編部門受賞作「学校は死の匂い」収録。
「ずうのめ人形」にも登場していた妹・美晴を主人公にした作品が含まれていて、比嘉家のキャラクターの奥行きが増します。短編ならではの刈り込まれた怖さがあり、長編3作で培ったシリーズへの愛着がここで活かされます。「などらきさん」という怪異の名前がタイトルになっているように、土地に根ざした民俗的な恐怖が各話を彩っています。
収録作の中でも、あらすじに記載した「学校は死の匂い」は特に面白くて、個人的にはこの1作のためだけに買う価値があると思っています。ラストの後味の悪さが絶妙で、読み終えたあとじわじわと嫌な気持ちが残る感覚がよかったです。
**こんな方に:** 長編で真琴というキャラクターが好きになった方。短くてもきちんと怖い話を楽しみたい方に。
短編でも手を抜かない澤村伊智さんの密度を感じられます。長編3作を読んでからぜひ手に取ってほしいです。

第5作:ぜんしゅの跫(短編集②・2021年)★★★★
妻が妊娠し幸せいっぱいの日々を送るサラリーマン・田原秀樹は、ある日、知り合いの娘の結婚式に参列することに。しかし新婦の佐川知紗は思わず二度見してしまうほど器量の悪い娘だった。式の最中、野崎という男性が知紗にある画像を見せたことから、彼女は錯乱しーー。(映画「来る」へのアンサー的短編「鏡」より)
第1作「ぼぎわんが、来る」にまつわる前日譚・後日譚を含む、シリーズ第2短編集。
「あのキャラクターのその後はどうなったのか」が気になっていた方への贈り物のような短編集です。1作目で印象に残った人物たちが再び登場する話があり、シリーズへの愛着がある方ほど嬉しい構成になっています。さらに表題作「ぜんしゅの跫」では、「ずうのめ人形」のラストでちらりと描かれた真琴と野崎の結婚式後のお話が読めます。あの場面が気になっていた方には、たまらない1作です。
**こんな方に:** 第1作「ぼぎわんが、来る」が好きだった方。真琴と野崎のその後が気になる方に。
シリーズのファンにはたまらない短編集です。1・2作目を読んでから手に取ってください。

第6作:ばくうどの悪夢(長編・2022年)★★★★
東京から父の地元に引っ越してきて以来、悪夢に悩まされていた「僕」は、現実でもお腹に痣ができていることに気づく。僕だけでなく、父親の友人の子供たちもみな現実に干渉する悪夢に苦しめられていた。やがて、そのうちひとりが謎の死を遂げる。夢に殺されたのか。次に死ぬのは誰か。なぜ、悪夢を見るのか。
約2年ぶりの長編、シリーズ第4長編。「悪夢が現実を侵食する」という設定が核になっています。
シリーズ中では最もボリュームのある長編(文庫版で480頁超)で、読み応えがあります。冒頭からグロテスクな描写があり、ぐっと物語に引き込まれます。そして読み進めるうちに、今自分が読んでいるのが夢の中の出来事なのか現実なのかわからなくなっていく感覚がたまりません。その謎を解こうとする野崎・真琴のやりとりも引き込まれます。物語の後半に向けてシリーズ全体の積み重ねが活きてくる構成になっていて、短編集を読んでキャラクターへの愛着が育まれた分だけ、楽しみ方が深くなる1冊です。
**こんな方に:** シリーズを通じて読み続けてきた方に。ボリュームのある長編が読みたい方に。
シリーズを積み重ねてきた方には、この1冊の終盤で確実に「そうか……!」となる場面があります。

第7作:さえづちの眼(中篇集・2023年)★★★★
1981年に大阪府東区巴杵町で2人の少年がUFOを目撃した「巴杵池事件」。母とともに小さな旅館を営む昌輝は、かつてUFOを目撃した少年のうちの一人だった。事件も遠い記憶になり始めたころ、湯水と名乗るライターが事件の記事を書きたいと旅館を訪ねてくる——。(表題作「さえづちの眼」より)
書き下ろし中篇「さえづちの眼」を含む3篇を収録した、シリーズ初の中篇集。
中篇という形式ならではの、短編より深く、長編より凝縮された密度で怪異と謎解きが展開します。UFO目撃事件という設定が、ホラー×ミステリーの文脈で使われるのが新鮮でした。それぞれ趣の異なる3篇が収録されていて、シリーズの幅の広さを改めて感じた1冊です。なお「ずうのめ人形」に登場したキャラクターが本作にも登場するので、必ず2作目を読んでから手に取ることをおすすめします。
**こんな方に:** シリーズを通じて読み続けてきた方へ。コンパクトに完結する怪異と謎解きを楽しみたい方に。
中篇という形式の面白さがあります。長編を読んだあとのちょうど良い読み心地でした。

第8作:すみせごの贄(短編集③・2024年)★★★★
いじめによって不登校になった中学2年生の翔太は、父の仕事の関係者である野崎昆の滋賀県での取材に同行することに。その土地では鍾馗の像を門柱に置く習俗があり、手が四本あるその独特な鍾馗は「たなわれしょうき」と呼ばれていた。翔太は取材中に不気味な影を目撃し——。(表題作より)
シリーズ第3短編集。野崎昆が各話に深く関わる構成になっています。
土地に根ざした民俗的な怪異をテーマに、短編集らしい多彩な怖さを味わえます。それぞれの話に、その土地ならではの習俗や伝承が丁寧に組み込まれていて、「こんな怪異があるのか」という発見がありました。野崎昆というキャラクターへの理解がさらに深まる内容で、シリーズファンには嬉しいポイントです。
**こんな方に:** 民俗ホラーが好きな方。野崎昆というキャラクターをもっと知りたい方に。
シリーズを通じて読んできた方への短編集として、しっかり楽しめます。

第9作:ととはり屋敷(前日譚短編集・2026年)
最強の霊能者・比嘉琴子には6人の弟妹がいた。だが、生き残ったのは真琴だけ。弟の双子・龍也と虎太を襲ったキャンプ場の惨劇、その下の弟の肇が挑んだ少年野球チームの怪、末子の栞が命がけで対峙した凶悪な獣——家族の歴史を紐解く、比嘉姉妹シリーズの前日譚となる短編集。
メインシリーズの前日譚として、比嘉家の弟妹たちを描く短編集。
これまで断片的にしか語られなかった「琴子と真琴の家族の歴史」に踏み込む作品です。琴子・真琴以外にも比嘉家には多くの弟妹がいたこと、そして生き残ったのは真琴だけということが示されていて、読む前からすでに重いものを感じます。現在積読中でまだ読んでいないのですが、シリーズ全作を読んだあとで改めてじっくり向き合いたい1冊です。読んだら感想を追記します。
**こんな方に:** シリーズを通じて読んできた方で、比嘉家の歴史に深く興味を持った方へ。メインシリーズ全作を読み終えてから手に取ることをおすすめします。

第10作:ざんどぅまの影(長編・2026年)
1981年、神奈川県Q区。沖縄からの移住者が暮らす街で新生活を始めた篤は、ある夜、全身ずぶ濡れの人影を目撃する。その日を境に、Q区の住民が次々と”自宅で海水に溺れ死ぬ”という異様な死を遂げていく。街が疑心暗鬼に包まれる中、篤は”おばぁ”と呼ばれる比嘉勝子のもとを訪ねるーー。
比嘉家の起源にまつわる、2026年最新長編。琴子・真琴の祖先にあたる「比嘉勝子」が登場します。
沖縄からの移住者コミュニティという舞台と、「自宅で海水に溺れ死ぬ」という怪異の設定からして只ならない雰囲気があります。比嘉家の力の源がどこから来ているのか——そのルーツに触れる作品として、シリーズを読み終えてから手に取りたい1冊です。現在積読中のため、読んだら感想を追記します。
**こんな方に:** シリーズを読み終えて、比嘉家の起源が気になった方に。

読む順番まとめ
| 読む順番 | タイトル | 種別 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 第1作 | ぼぎわんが、来る | 長編 | ★★★★★ |
| 第2作 | ずうのめ人形 | 長編 | ★★★★ |
| 第3作 | ししりばの家 | 長編 | ★★★★ |
| 第4作 | などらきの首 | 短編集① | ★★★★ |
| 第5作 | ぜんしゅの跫 | 短編集② | ★★★★ |
| 第6作 | ばくうどの悪夢 | 長編 | ★★★★ |
| 第7作 | さえづちの眼 | 中篇集 | ★★★★ |
| 第8作 | すみせごの贄 | 短編集③ | ★★★★ |
| 第9作 | ととはり屋敷 | 前日譚短編集 | (積読中) |
| 第10作 | ざんどぅまの影 | 長編 | (積読中) |
**「まず長編だけ読んでみたい」という方へのルート:**
→ ぼぎわんが、来る → ずうのめ人形 → ししりばの家 → ばくうどの悪夢
この4作を読めば、シリーズの主要キャラクターの成長と物語の大きな流れを体感できます。短編集は、長編を読んで「もっと知りたい」と思ってから読んでも遅くありません。
まとめ
このシリーズを振り返って改めて感じるのは、「積み重ねる面白さ」です。
1作目から引き込まれ、2作目でさらに深まり、短編集でキャラクターへの愛着が増し、長編に戻るたびに「ここまで来たのか」という感慨がある。それがこのシリーズ特有の楽しさだと思っています。
琴子という最強の霊媒師の存在が少しずつ明かされていく過程は、シリーズ全体を通じて積み上げてきたものが報われる感覚があります。ととはり屋敷とざんどぅまの影はまだ積読中ですが、比嘉家の歴史がさらに掘り下げられる期待感が今から高まっています。まだシリーズを途中まで読んでいる方は、ぜひ続きを読んでみてください。
澤村伊智さんの全作品(比嘉姉妹シリーズ以外の作品も含む)は、別記事の[澤村伊智の全作品まとめ]でご紹介しています。シリーズを読み終えたあとの次の一冊選びにもお役立てください。
またブログに遊びに来ていただけると嬉しいです。

コメント