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本棚の住人、Konohaです。
2026年8月に『ナキメサマ』を読んで、阿泉来堂さんの「作家・那々木悠志郎シリーズ」に出会いました。読み終えた直後に声が出てしまうほどのどんでん返しにすっかりやられて、9月から10月にかけて、残りの4作を一気に読み進めました。そして10月、完結編の『化身の残夢』で、那々木悠志郎の物語を最後まで見届けたところです。
全5作を読み終えて感じたのは、1作ごとにまったく違う角度から楽しませてくれるシリーズだということです。今回は、そんな作家・那々木悠志郎シリーズの読む順番と各作品の見どころを、ネタバレなしで刊行順にご紹介します。
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作家・那々木悠志郎シリーズとは?
作家・那々木悠志郎シリーズは、神出鬼没のホラー作家にして「怪異譚蒐集家」の那々木悠志郎(ななぎゆうしろう)が、各地で起きる怪異と事件の謎に迫るホラーミステリーです。角川ホラー文庫から、2020年の『ナキメサマ』に始まり、2025年の『化身の残夢』で完結した全5作が刊行されています。
このシリーズの特徴は、物語の多くが那々木ではなく、事件に巻きこまれた人の視点で語られることです。初恋の相手を探す青年、帰郷した若い父親、担当編集者、バスの乗客……。毎回ちがう主人公の前に那々木がふらりと現れ、怪異を頭から否定せず、それでいて冷静に筋道を立てて真相に近づいていきます。自分の作品を知らない相手にショックを受けるという「お決まり」のくだりもあって、巻を重ねるごとにこの変わり者の作家が好きになっていきました。
舞台は北海道の因習の村から、いわくつきの廃墟、宗教団体の本部まで、作品ごとにさまざまです。怪異の怖さ、謎解き、どんでん返し、そして登場人物たちの切ない物語。そのどれを前に出すかが1作ごとに違うので、5作を通して読むと、まるで違う味わいのホラーミステリーを次々に楽しめます。
読む順番について
作家・那々木悠志郎シリーズは、第1作『ナキメサマ』から刊行順に読むのがおすすめです。
- 『ナキメサマ』(2020年)
- 『ぬばたまの黒女』(2021年)
- 『忌木のマジナイ 作家・那々木悠志郎、最初の事件』(2021年)
- 『邪宗館の惨劇』(2022年)
- 『化身の残夢 那々木悠志郎、最後の事件』(2025年)
第1作から第4作までは、どれも事件がその1冊で完結するので、途中の巻から読んでも物語は楽しめます。それでも刊行順をおすすめしたい理由が3つあります。
- 第3作『忌木のマジナイ』は「最初の事件」ですが、3作目に読んでほしい作品です。 那々木がデビュー前に初めて出会った怪異を描く前日譚なので、時系列ではシリーズの最初にあたります。ただ、前の2作で那々木というキャラクターを知っているほど、彼の原点が心に響く作りになっています
- 第4作『邪宗館の惨劇』は、第2作『ぬばたまの黒女』とつながる要素があります。 少なくとも『ぬばたまの黒女』を先に読んでおくと、「おっ」と思える場面が増えます
- 第5作『化身の残夢』は、必ず最後に読んでください。 過去作の人物や出来事が物語の大事なところに関わってくる完結編で、4作を読んできた人ほど驚きと感動が大きくなります
まずはこの1冊から
那々木悠志郎シリーズを初めて読む方は、迷わず第1作『ナキメサマ』から始めてください。阿泉来堂さんのデビュー作で、読み終えた直後に「まさかそう来るとは」と声が出てしまう、二転三転のどんでん返しが待っています。この1冊で那々木悠志郎を気に入ったら、あとは最後まで一気に駆け抜けられるはずです。
各作品紹介(刊行順)
第1作:ナキメサマ(2020年)★★★★
シリーズの記念すべき第1作で、阿泉来堂さんのデビュー作です。第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞で〈読者賞〉を受賞しています。
初恋の相手を探して北海道の稲守村を訪れた青年が、村の儀式と、次々に見つかる異様な死体に巻きこまれていく物語です。閉ざされた村の因習ホラーとして読み進めていたら、終盤で物語の見え方が二転三転して、読み終えた直後に「まさかそう来るとは」と声が出てしまいました。
那々木悠志郎は、自分の作品を知らない相手にショックを受ける、ちょっと変わったホラー作家として登場します。最初は「何だこの人」と思っていたのに、気づけばこの人の次の事件が読みたくなっていました。
こんな方におすすめ: どんでん返しのあるホラーミステリーが好きな方、村の因習ものが好きな方に。
どんでん返しの完成度は満点です。ここで那々木悠志郎を気に入ったら、あとは最後まで一気に駆け抜けられます。
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第2作:ぬばたまの黒女(2021年)★★★★
舞台は前作と同じく北海道。今回は道東地方の寒村で、物語は帰郷した青年・陽介の視点で進みます。
焼け落ちた神社と、全身の骨を折られた遺体、そして黒い装束の女。猟奇的な事件の謎と、人の理屈では片づけられない怪異が交互に押し寄せてくる、ホラーとミステリーがちょうど半々くらいの1冊です。
読み終えていちばん心に残ったのは、身重の妻から逃げるように帰郷した陽介が、父親になる覚悟を決めていく物語でした。前作のような大きな驚きとは違う方向から心を動かされて、このシリーズの懐の深さを感じました。那々木の「お決まり」のくだりに、思わず微笑ましくなったのも2作目ならではです。
こんな方におすすめ: 閉ざされた村の因習と、猟奇的な事件の謎を同時に味わいたい方に。
怪異の謎と、ひとりの青年が家族と向き合う物語がひとつに重なる、シリーズの幅を広げてくれる1冊です。
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第3作:忌木のマジナイ 作家・那々木悠志郎、最初の事件(2021年)★★★★★
副題のとおり、那々木悠志郎が作家としてデビューする前に初めて出会った怪異を描く、シリーズの前日譚です。
那々木が書いた未発表原稿という「作中作」と、それを読む担当編集者・久瀬古都美の数日間が交互に描かれます。原稿の中の物語が、少しずつ古都美の現実に染み出してくる感覚がとても不気味で、ふたつの物語がひとつに重なる瞬間まで夢中でページをめくりました。
噂話で語られる「崩れ顔の女」が少しずつ迫ってくる怖さは、シリーズでいちばんです。そして何より、これまでの2作で見てきた那々木の姿が、読み終えたあとには少し違って見えるようになりました。
こんな方におすすめ: 作中作や、物語と現実がリンクしていく仕掛けが好きな方に。じわじわ迫ってくる怖さを味わいたい方にも。
読み終えたときの満足感はシリーズでいちばんです。那々木悠志郎というキャラクターが、もっと好きになる1冊でした。
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第4作:邪宗館の惨劇(2022年)★★★★★
山道で立ち往生したバスの乗客たちが、いわくつきの廃墟に閉じこめられる、クローズドサークルのホラーミステリーです。
かつて宗教団体の信者が集団死した廃墟「邪宗館」で、乗客たちが次々に殺されていく。しかも主人公の耕平は、その惨劇の夜から抜け出せず、何度も同じ夜に引き戻されてしまいます。ループものとしての「今回は何が違うのか」を追う楽しさと、なぜ夜がくり返されるのかという謎の両方に引きこまれました。
途中からやって来る那々木が、耕平の話を「ありえない」で片づけず、ひとつずつ確かめていく姿も頼もしいです。怖さも残酷さもシリーズで強めの作品なのに、読み終えたときに残ったのは、ラストシーンの温かい余韻でした。
こんな方におすすめ: ループもの・クローズドサークルものが好きな方、怖さと切なさの両方を味わいたい方に。
くり返しの謎が解ける瞬間の驚きと、ラストシーンの切なさ。シリーズ屈指の1冊だと胸を張っておすすめできます。
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第5作:化身の残夢 那々木悠志郎、最後の事件(2025年)★★★★
サブタイトルに「那々木悠志郎、最後の事件」とあるとおり、シリーズの完結編です。第3作の「最初の事件」と対になっています。
那々木が招かれたのは、これまでのシリーズで何度も影をちらつかせてきた宗教団体「人宝教」の本部。そこでは、那々木がかつて出会ったはずの怪異が起きていました。教団に潜入した男と、那々木に同行する刑事。立場の違うふたつの視点から、教団の不気味さが少しずつ見えてきます。
シリーズでいちばんサスペンスの色が濃く、誰が味方なのか分からないハラハラが最後まで続きました。終盤、思いもよらない形で過去作とのつながりが明かされたときには、思わず声が出たほどです。
こんな方におすすめ: 第1作から読んできて、那々木悠志郎の物語がどこへたどり着くのかを見届けたい方に。
4作かけて積み重ねてきたものが一気に動き出す、最後の事件にふさわしい物語でした。
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よくある質問
作家・那々木悠志郎シリーズは、どの順番で読めばいいですか?
刊行順に『ナキメサマ』→『ぬばたまの黒女』→『忌木のマジナイ』→『邪宗館の惨劇』→『化身の残夢』の順で読むのがおすすめです。全5作で、第5作『化身の残夢』で完結しています。
「最初の事件」の『忌木のマジナイ』から読んでもいいですか?
物語としては単体でも読めますが、私は刊行順どおり3作目に読むのをおすすめします。『ナキメサマ』『ぬばたまの黒女』で那々木悠志郎というキャラクターを知っているほど、「最初の事件」で描かれる彼の原点が心に響く作りになっていると感じました。
途中の巻から読んでも大丈夫ですか?
第1作から第4作までは、どれも事件がその1冊で完結するので、途中から読んでも物語は楽しめます。ただ、『邪宗館の惨劇』には『ぬばたまの黒女』とつながる要素があります。また完結編の『化身の残夢』は、過去作の人物や出来事が物語の大事なところに関わってくるので、必ず最後に読んでください。
ホラーとミステリー、どちらの要素が強いシリーズですか?
どの作品も、怪異の怖さと謎解きの両方がそろったホラーミステリーです。ただ、作品ごとに味わいがかなり違います。どんでん返しが主役の『ナキメサマ』、ホラーとミステリーが半々の『ぬばたまの黒女』、怖さがいちばんの『忌木のマジナイ』、ループもの×クローズドサークルの『邪宗館の惨劇』、サスペンスの色が濃い『化身の残夢』と、1作ごとに違う角度から楽しめます。
怖い場面や残酷な描写はありますか?
あります。特に『ぬばたまの黒女』の猟奇的な遺体や、『邪宗館の惨劇』『化身の残夢』の終盤には、かなり凄惨な場面が出てきます。ただ、描写がしつこく続くタイプではなく、怪異の気味の悪さや、追い詰められていく緊張感のほうが強く印象に残るシリーズです。
まとめ
こうして振り返ってみると、作家・那々木悠志郎シリーズは、1作ごとにまったく違う顔を見せてくれるシリーズでした。どんでん返しの『ナキメサマ』、家族の物語でもあった『ぬばたまの黒女』、作中作で那々木の原点を描いた『忌木のマジナイ』、くり返される惨劇の夜を描いた『邪宗館の惨劇』、そして因縁の教団との決着を描いた『化身の残夢』。それなのに最後には、すべてがひとつの物語につながっていきます。
最後のページを閉じたとき、『ナキメサマ』から順番に読んできてよかったと心から思えました。これから読む方にも、ぜひ第1作から那々木悠志郎を追いかけてほしいです。
Konohaのおすすめベスト3
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忌木のマジナイ
★★★★★原稿の中の物語と、それを読む編集者の現実がひとつに重なる瞬間の気持ちよさは格別でした。「崩れ顔の女」の怖さも、那々木の原点に触れられる感動も、シリーズでいちばんです。
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