屍人荘の殺人
レビュー

夏合宿のペンションが、出られない密室になる。今村昌弘『屍人荘の殺人』感想レビュー【ネタバレなし】

公開 更新約7分で読めます

※本記事はAIを活用して作成し、管理人が内容を確認・編集しています。

本棚の住人、Konohaです。

先日、今村昌弘さんの最新作『0秒前の彼女』のレビューを書きました。サスペンスとしてとても面白かったのですが、読み終えたあと、私が今村さんを好きになったきっかけの作品をもう一度読みたくなりました。それが、デビュー作の『屍人荘の殺人』です。

初めて読んだときは、「ゾンビでクローズドサークルを作る」という発想に本当に驚かされました。今回は展開を知ったうえでの再読です。驚きは減ってしまうかもしれない、と思いながら読み始めたのですが、むしろ「ここにも手がかりが書いてあったのか」と気づく場面が多く、初読とは違う楽しみ方ができました。

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『屍人荘の殺人』の評価

Konoha

Konohaの評価

  • おすすめ度 ★★★★★
  • 設定の驚き ★★★★★
  • 謎解きの納得度 ★★★★★
  • 怖さ・残酷さ ★★★☆☆
  • 読みやすさ ★★★★☆

クローズドサークルを作る発想に驚かされ、その仕掛けが事件のトリックにまで深く関わってくるところに唸らされました。再読でも面白さは変わらない、何度でも読み返したくなる一冊です。


『屍人荘の殺人』とは

『屍人荘の殺人』は、2017年に東京創元社から刊行された今村昌弘さんのデビュー作です。第27回鮎川哲也賞を受賞し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」の3つのランキングで1位、さらに第18回本格ミステリ大賞にも選ばれ、デビュー作で5冠を達成しました。2019年には映画化され、同じ年に創元推理文庫から文庫版も出ています。のちに『魔眼の匣の殺人』『兇人邸の殺人』と続く、屍人荘の殺人シリーズの第1作です。


『屍人荘の殺人』の見どころ

ゾンビが作る、現代版のクローズドサークル

嵐の山荘、絶海の孤島。外の世界から切り離された場所で事件が起きる「クローズドサークル」は、ミステリーの定番の舞台です。ただ、スマートフォンもあり、車で助けも呼べる現代では、登場人物を閉じ込めるのは簡単ではありません。本作で学生たちを山の中のペンション「紫湛荘」に閉じ込めるのは、突如あらわれたゾンビの群れです。外に出れば襲われる、建物の中にも少しずつ入り込んでくる。初めて読んだときは「その手があったか」と声が出そうになりました。

ゾンビが、そのまま謎解きの材料になる

本作のすごいところは、ゾンビが「登場人物を閉じ込めるための仕掛け」で終わらないところです。噛まれたらどうなるのか、どこまで入り込んでくるのか。ゾンビの性質そのものが、事件のトリックや犯人の行動に深く関わってきます。「この状況だからこそ起きた事件」になっているので、真相が明かされたときの納得感がとても大きいです。ペンションの間取りや、序盤に何気なく書かれた説明も、あとから効いてきます。

王道の探偵像と、ミステリアスな探偵少女

ミステリ愛好会の会長・明智恭介は、自ら「神紅のホームズ」を名乗る、まさに王道の探偵像です。一方、彼らを合宿に誘う剣崎比留子は、警察にも知られた探偵少女。それなのに、ミステリ用語にはまったく詳しくないというギャップがあります。そして語り手の葉村譲が、二人のあいだでワトソン役を務めることになります。タイプの違う探偵たちと語り手の関係も、シリーズを通しての大きな魅力です。


『屍人荘の殺人』の感想

序盤は、とても王道の始まり方です。ミステリ好きの二人だけのサークル、謎めいた女性からの「奇妙な取引」、そして曰くつきの夏合宿。届いていた脅迫状の話まで出てきて、「これぞクローズドサークルの導入」と、わくわくしながら読み進めました。

再読して面白かったのは、何気ない会話の意味が変わって見えることです。合宿に向かう途中の登場人物のある台詞は、初読のときは聞き流していましたが、今回は「ここで、もうこんなにはっきり示していたんだ」と思わずにやりとしてしまいました。ペンションの設備の説明も、一度読んだ人ほど「これは重要だ」と分かる書き方になっています。

物語の途中で、ある登場人物に起きる出来事は、初めて読んだときの衝撃が忘れられない場面です。展開を知っていても、やはり読んでいて辛くなりました。この人の活躍をもっと見たかった、という気持ちは今回も変わりませんでした。

閉じ込められたあとは、一夜明けるたびに状況が悪くなっていきます。部屋の前に残された不気味なメッセージ、密室の謎、そして少しずつ失われていく安全な場所。「ゾンビに追い詰められながら、次の犯行を止められるのか」という緊張と、「この状況で、犯人はどうやって、そしてなぜ犯行に及んだのか」という謎の両方に引っぱられて、ページをめくる手が止まりませんでした。

解決編では、それまでの小さな違和感がひとつずつ回収されていきます。犯人を絞り込む決め手がとても論理的で、再読でもきれいに組み立てられた推理に感心しました。ゾンビという設定の驚きだけでなく、本格ミステリーとしての骨格がしっかりしているからこそ、何度読んでも面白いのだと思います。


『屍人荘の殺人』がおすすめな人

嵐の山荘や孤島ものが好きで、まだ見たことのない形のクローズドサークルを読んでみたい方に。 本格ミステリーとしての謎解きをしっかり楽しみたい方にも、自信を持っておすすめできます。

一方で、こんな方には少し合わないかもしれません。

  • 現実に起こりうる設定だけで謎を解く、リアル志向のミステリーが好きな方(ゾンビの存在を前提にした「特殊設定ミステリー」です)
  • 遺体の損傷などの残酷な描写が苦手な方(ゾンビに襲われる凄惨な場面がいくつかあります)

ゾンビものとミステリーがこんなにきれいに噛み合うのかと、読めばきっと驚くはずです。犯人やトリックを知ってしまう前に、ぜひ手に取ってみてください。


よくある質問

質問

ネタバレを知らずに読んだほうがいいですか?

回答

ゾンビが出てくることは映画などで広く知られていますが、それを知っていても十分に楽しめます。本作の醍醐味は、ゾンビのいる状況で起きる殺人事件の謎解きにあるからです。犯人やトリックだけは、知らないまま読んでください。展開を知っていた私の再読でも、伏線に気づく楽しさがあって面白かったです。

質問

グロテスクな描写や怖い場面はありますか?

回答

あります。ゾンビに襲われた遺体がかなり凄惨に描かれる場面や、押し寄せるゾンビから逃げるパニック映画のような場面があります。ただ、ゾンビの怖さで読ませるホラーではなく、あくまで謎解きが中心の作品です。私は怖さよりも、次に何が起きるのかというハラハラ感のほうが強く残りました。

質問

本格ミステリーを読み慣れていなくても楽しめますか?

回答

楽しめます。明智はミステリーの定番ネタをよく口にしますが、剣崎比留子はミステリー用語に詳しくない人物なので、読者と同じ目線で会話が進む場面も多いです。登場人物はやや多めですが、学生の合宿という身近な舞台なので、状況はつかみやすいと思います。

質問

シリーズの2作目以降から読んでも大丈夫ですか?

回答

事件そのものは1冊ごとに完結しますが、本作で起きた出来事や登場人物の関係は2作目以降にも引き継がれます。本作の大きな驚きを先に知ってしまうことにもなるので、『屍人荘の殺人』から刊行順に読むのがおすすめです。


おわりに

『0秒前の彼女』を読んだことがきっかけの再読でしたが、あらためて、デビュー作でこれだけの完成度だったことに驚かされました。展開を知っていても面白いのは、驚きの設定だけでなく、謎解きの土台がしっかり作られているからだと思います。シリーズ2作目の『魔眼の匣の殺人』も読み返して、レビューを書きました。今度は「予言」がクローズドサークルを作ります。

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またブログに遊びに来ていただけると嬉しいです。

Konoha

本棚の住人・このブログの管理人

どんでん返しのミステリーと、ぞくっとするホラー×ミステリーが大好きです。綾辻行人・三津田信三・森博嗣を中心に、読んだ本の感想と「次の一冊」の選び方をお届けしています。

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