※本記事はAIを活用して作成し、管理人が内容を確認・編集しています。
本棚の住人、Konohaです。
「怪談×本格ミステリー」というジャンルを追いかけていると、三津田信三さんや澤村伊智さんと並んで必ず名前が挙がる作家がいます。大島清昭さんです。
大島さんの経歴を知ったときは、正直驚きました。もともとは幽霊や妖怪をテーマにした研究書を書いていた研究者で、2020年に『影踏亭の怪談』で第17回ミステリーズ!新人賞を受賞し、小説家としてデビューしたという異色の持ち主なんです。作中に出てくる民俗学のフィールドワークの描写が単なる雰囲気づくりではなく、本当にその道を歩んできた人が書いているという説得力につながっていると感じます。
今回は、デビュー作から2026年刊行のシリーズ最新刊、単独作品まで、大島清昭さんの全作品を整理してみました。2026年7月時点の情報に基づいています。
まずはこの一冊から
初めて大島清昭さんの作品に触れるなら、デビュー作であり呻木叫子シリーズの第1作でもある『影踏亭の怪談』から読むのがおすすめです。第17回ミステリーズ!新人賞を受賞した表題作を含む連作短編集で、この作家の持ち味がまとまって味わえます。
大島清昭という作家
1982年栃木県生まれ。筑波大学第一学群人文学類、同大学院地域研究研究科を修了し、民俗学・宗教学を学際的に学んだのち、幽霊や妖怪をテーマにした研究書『現代幽霊論』(2007年)や『Jホラーの幽霊研究』(2010年)を発表してきた研究者です。
中学時代からミステリー小説を書き始め、京極夏彦さんの作品に大きな影響を受けたと語っています。長く執筆を続けたのち、2020年に『影踏亭の怪談』で第17回ミステリーズ!新人賞を受賞し、小説家としてデビューしました。
大島作品の最大の特徴は、民俗学のフィールドワークで培った知見をそのまま創作に持ち込んでいることだと思います。実在する妖怪伝承や怪異譚を丹念に調べ上げ、その土地ならではの因習・信仰と、密室や不可能犯罪といった本格ミステリーのロジックを組み合わせる——研究者としての顔と小説家としての顔が、そのまま作風の強みになっている作家です。
2026年の新刊情報
2026年も呻木叫子シリーズの新刊が刊行されています。
- 1月30日冷蔵庫婆の怪談
呻木叫子シリーズ第4弾
シリーズはおよそ1〜2年に1作のペースで刊行が続いています。次回作の情報が入り次第、この記事も更新していく予定です。
呻木叫子シリーズ
大島清昭さんの代表シリーズ。実話怪談作家「呻木叫子」(うめき・きょうこ、本名をもじった筆名)が、民俗学のフィールドワークの手法を用いて取材した先々で遭遇する怪異と事件を描く連作ミステリーです。語り手による事件・調査パートと、「呻木叫子の原稿」と題された怪談取材パートを交互に差し込みながら進む構成で、読者は怪異にまつわる情報を少しずつ受け取りつつ、語り手とともに謎を解いていく形になっているのがこのシリーズの特徴です。
事件にまつわる謎そのものは本格ミステリーとしてのロジックできちんと解決される一方で、怪異と思われる現象そのものは合理的に説明されないまま残り、怖さが最後まで消えないのがこのシリーズの最大の特徴です。解説でも「ほぼすべてが怪奇の闇の中に閉ざされる中、ほんのわずかに合理性の光が差し込む」と評されているように、謎解きの快感と割り切れない不気味さが同居しているところに、大島さんらしさが凝縮されています。
呻木叫子シリーズ 作品リスト
どれから読む?:刊行順に読むのがおすすめです。第1作でこの作品の構造が分かるので、そこから積み重ねて読むと味わいが増します。
第1作:影踏亭の怪談(2021年)★★★★
僕の姉は実話怪談作家だ。本名にちなんだ「呻木叫子」というふざけた筆名で、民俗学でのフィールドワークの経験を生かしたルポルタージュ形式の作品を発表している。ある日姉の自宅を訪ねた僕は、密室の中で両瞼を己の髪で縫い合わされて昏睡する姉を発見する。この怪現象は、取材中だった旅館〈K亭〉に出没する霊と関連しているのか? 調査のため〈K亭〉こと影踏亭を訪れた僕は、深夜に発生した奇妙な密室殺人の第一発見者となってしまう——第十七回ミステリーズ!新人賞受賞作ほか全四編を収録する、怪談×ミステリの最前線。
シリーズ第1作にして、第17回ミステリーズ!新人賞受賞作でもあります。4つの短編それぞれの怪異が印象に残ったので、1話ずつ感想を残しておきます。
表題作「影踏亭の怪談」
「自分の髪で瞼を縫い合わされて昏睡していた」という状況だけで怖くて、この本を買うことを即決めました。瞼を縫い合わされていた理由には驚かされます。
「朧トンネルの怪談」
死体も事故も一切ないのに幽霊が出るというトンネルの設定が新鮮でした。そのうえで、事件の動機に関わる部分の怖さが特によかったです。
「ドロドロ坂の怪談」
泥まみれのお化けが目撃される坂道が舞台。実際に事件が起き、死体が密室で泥まみれの状態で見つかるという見立て殺人の状況に、王道的な怖さがあります。泥まみれにされた理由が論理的に解決されるところも気持ちよかったです。
「冷凍メロンの怪談」
空から降ってくる冷凍メロンで人が亡くなるという都市伝説から始まり、心霊番組のロケ中に呻木叫子自身が頭に冷凍メロンを受けて意識不明の重体になるという展開です。ミステリーとしての謎解き部分は正直物足りなさを感じ、この1話だけ評価を1段階下げました。ただ、それまでの3話に残っていた怪異的な現象がここでじわじわとつながって見えてくる構成は見事で、そしてラストには思わず唸らされました。
こんな方に: 怪談の雰囲気を味わいながら、きちんと謎解きも楽しみたい方に。
大島清昭さんの作品を初めて読むなら、まずこの1冊から入れば間違いありません。
第2作:赤虫村の怪談(2022年)★★★
H・P・ラヴクラフト×不可能犯罪 独自の妖怪伝説が継承される赤虫村—— 人知を超えた方法で殺されてゆく村の有力者一族 第17回ミステリーズ!新人賞受賞作家の初長編 愛媛県の山間部にある赤虫村(あかむしむら)には、独自の妖怪伝説が存在する。暴風を呼ぶ「蓮太(はすた)」、火災を招く「九頭火(くとうか)」、無貌の「無有(ないある)」、そして古くから伝わる”クトル信仰”。フィールドワークのために訪れた怪談作家・呻木叫子(うめききょうこ)は村の名家である中須磨家で続く、妖怪伝説の禍を再現するかのような不可能状況下での連続殺人を調査することに。
シリーズ初の長編にして、大島さんの民俗学バックグラウンドがもっとも色濃く出た作品です。各章で赤虫村に伝わる妖怪伝説をひとつずつ紹介しながら、その伝説になぞらえた見立てのような事件が起こっていく構成になっていて、伝承通りに人が死んでいく不可能犯罪という設定は読んでいて背筋が寒くなりました。土地に根付いた信仰の不気味さをここまで丁寧に描けるのは、この作家ならではだと思います。見立てを行った動機の部分はきちんと論理的に解決されていて、そこは素晴らしかったです
長編としての謎解きのボリュームは十分ですが、初長編ということもあってか、短編集だった第1作に比べると密度にやや波がある印象も受けました。
こんな方に: 民俗学的な因習・伝承ホラーが好きな方に。
第3作:バラバラ屋敷の怪談(2024年)★★★
八人の被害者が解体されたバラバラ屋敷。そこで目撃される霊は、なぜか多くても四人までである。殺人鬼、少女霊、古の神、異界駅——ミステリ×怪談四編を収録する怪談作家・呻木叫子の事件簿 第十七回ミステリーズ!新人賞受賞作シリーズ最新刊 民俗学のフィールドワークの手法を用いて、取材を元に怪談を執筆している呻木叫子が遭遇する四つの事件。八人の女性が犠牲になったバラバラ殺人の現場周辺で目撃される四体の幽霊の謎と、現場の屋敷で新たに発生した密室殺人を呻木が解き明かす表題作ほか、博物館で目撃される少女の霊の来歴を探るうちに、思わぬ不可能犯罪に行き当たる「青いワンピースの怪談」など、第17回ミステリーズ!新人賞受賞作『影踏亭の怪談』の新鋭による恐怖と驚愕の連作集。
シリーズ3作目は再び連作短編集の形式に戻り、表題作の「目撃される霊の数が合わない」という仕掛けがとても印象的でした。怪異の”数”というごく単純な違和感から、きちんと論理的な真相にたどり着く構成にはうならされます。短編集でありながら、それぞれの話が最後につながっていく感じがあり、やはり短編集の形式でこそ面白さが出るシリーズだと改めて感じました。
表題作「バラバラ屋敷の怪談」
バラバラ屋敷で再びバラバラ殺人が起こるという事件に加え、現場が密室であること、さらに目撃される幽霊の数が被害者の人数よりも少ないという謎が重なる構成です。どちらの謎も論理的に解決されていて面白く、そのうえで明かされる犯人の怖さと、読み終えたあとに残る不穏な終わり方にぞくりとさせられました。
「青いワンピースの怪談」
青いワンピースの女性を目撃した人が次々と自殺していくという話から始まり、その少女の正体を調査していく展開です。怪異なりの論理が解き明かされていく過程が面白く、そこから明かされる真実にも「なるほど」と納得させられました。
「片野塚古墳の怪談」
関わると災厄が起こるという古墳の話で、理不尽と言いたくなるほどの祟りの強さが印象的です。その場所でロケをおこなうことになったメンバーが、殺人事件に遭遇してしまいます。
「にしうり駅の怪談」
きさらぎ駅を思わせる設定の「にしうり駅」が舞台。失踪した友人を助けるためににしうり駅へ向かうという話で、この駅には襲われると死んでしまう「瓜人間」がいるという独特の世界観になっています。その駅で不可解な事件が起こり——という展開でした。
最後の短編に登場する呻木叫子自身にも注目です。短編集でありながら、それぞれの話が最後につながっていく感じがあり、やはり短編集の形式でこそ面白さが出るシリーズだと改めて感じました。
こんな方に: シリーズを読み進めていて、怪異の”数のトリック”のような仕掛け系ミステリーが好きな方に。
第4作:冷蔵庫婆の怪談(2026年)★★★★
人けのない通りに不定形の化物が佇んでいる。そいつは子供を見つけると、人間の姿に変身し、親し気に語りかけてくるのだ。「もういーかい」 未確認動物、自殺させる呪い、児童連続殺人、幽霊屋敷……怪談作家・呻木叫子が解き明かす四つの怪異と犯罪 第17回ミステリーズ!新人賞受賞作シリーズ最新刊 地方に住む小学生の間でかつて流行していた”冷蔵庫婆(れいぞうこばばあ)”の怪談。それを模倣したような、連続児童殺害事件が発生する。被害者たちの遺体は異様な状態で冷蔵庫の中に遺棄されていた。民俗学のフィールドワークの手法を用いて怪談を執筆する作家・呻木叫子(うめききょうこ)は警察から捜査協力を要請されるが……
独立した4つの怪異に見えていたものが、読み進めるうちに一本の線としてつながっていく構成が見事な1作でした。警察から捜査協力を要請されるという呻木叫子の立ち位置の変化も、シリーズの中で新鮮な緊張感を生んでいます。詳しい感想は別記事にまとめました。
→ [大島清昭『冷蔵庫婆の怪談』感想レビュー【呻木叫子シリーズ・ネタバレなし】]
こんな方に: シリーズを最初から追ってきた方、都市伝説モチーフのホラーが好きな方に。
注目の単独作品
呻木叫子シリーズ以外にも、大島清昭さんは光文社・KADOKAWAからそれぞれ異なる持ち味の作品を発表しています。
地羊鬼の孤独(2022年 / 光文社)
遺体の入った棺が、市内で次々に発見された。動機の見えない一連の殺人を繋ぐものは、現場に残された中国妖怪「地羊鬼」の名前のみ。新米刑事・八木沢は、オカルト担当を自称する警部補・林原とコンビを組み捜査を進める。だが、過去の連続児童誘拐殺害事件、密室変死事件との関連が浮かびはじめ、事件の全容はもはや人間の手に収まらないものになっていた——。
呻木叫子シリーズとは違い、新米刑事とオカルト担当警部補のコンビが事件を追う警察小説の形式です。中国妖怪をモチーフにした猟奇殺人という設定が気になっていて、シリーズとは別角度から大島さんの作風を味わえそうな1冊だと思っています。
こんな方に: オカルト×警察小説の組み合わせが好きな方に。
最恐の幽霊屋敷(2023年 / KADOKAWA、2025年文庫化)
「最恐の幽霊屋敷」という触れ込みで貸し出されている物件があるーー。幽霊を信じない探偵・獏田夢久(ばくたゆめひさ)は、屋敷で相次ぐ不審死の調査を頼まれる。さまざまな理由でその家に滞在した者たちは、一様に背筋の凍る怪異に見舞われた上、恐ろしい死に直面する。屋敷における怪異の歴史を綴ったルポ。その中に謎を解く手がかりがあるのだろうか。調査に乗り出す獏田を待ち受ける、意外な真相とはーー?
「いわくつき物件に滞在した人たちのオムニバス形式の怪異」と「探偵によるルポの謎解き」が組み合わさった構成のようで、幽霊屋敷ホラーが好きな方には気になる1冊です。2025年に角川ホラー文庫版が出て手に取りやすくなりました。
こんな方に: じっくり系の幽霊屋敷ホラーが好きな方に。
一目五先生の孤島(2024年 / 光文社)
怪異による超常現象×名探偵の論理! 30年前から繋がる惨劇の連鎖。その死は祟りか、殺人か? 探偵に憧れて調査会社に就職した倭文だったが、霊を呼び寄せる特異体質が災いしすぐに異動になる。そこは変調課という超常現象に特化した部署だった。リゾート開発会社の依頼で、作業員の不審死が続く五福島に調査に行く変調課のメンバー。その島は30年前に、関係者全員死亡という不可解な連続殺人事件があった場所だった。
「超常現象専門の部署」という設定と、30年前の事件と現在がつながる孤島ものという構成に惹かれます。名探偵ものの論理と怪異のどちらも楽しめそうな作品です。
こんな方に:名探偵ものの謎解きと、孤島×過去の事件という構図が好きな方に。
研究者としての著作
大島清昭さんは小説家である以前に、幽霊・妖怪研究者としてのキャリアを持つ書き手です。『現代幽霊論 妖怪・幽霊・地縛霊』(2007年)と『Jホラーの幽霊研究』(2010年)は、いずれも小説ではなく学術寄りの研究書ですが、大島さんが小説の中で描く怪異の”リアリティ”がどこから来ているのかを知る手がかりになる著作です。
また、2022年刊行のアンソロジー『超常気象 異形コレクションLIV』(光文社文庫)に短編「星の降る村」を寄稿しています。澤村伊智さんや加門七海さんなど怪談・ホラー作家陣による書き下ろしアンソロジーで、大島さんの短編としての一面も味わえます。
大島清昭 キャリア年表
- 2021年08月
- 2022年08月
- 2022年11月
- 2023年07月
- 2024年07月
- 2024年11月
- 2026年01月
まとめ:どの作品から始める?
迷ったときのおすすめルートをまとめます。
| こんな方に | おすすめの1冊 |
|---|---|
| 大島清昭さんを初めて読む方 | 影踏亭の怪談 |
| 民俗学的な因習・伝承ホラーが好きな方 | 赤虫村の怪談 |
| 仕掛け系のミステリーが好きな方 | バラバラ屋敷の怪談 |
| オカルト×警察小説が好きな方 | 地羊鬼の孤独 |
| じっくり系の幽霊屋敷ホラーが好きな方 | 最恐の幽霊屋敷 |
| 名探偵ものの論理×孤島ものが好きな方 | 一目五先生の孤島 |
今回こうして全作品を整理してみて、呻木叫子シリーズ以外にも読みたい作品がまだたくさん残っていることに改めて気づかされました。特に『地羊鬼の孤独』と『一目五先生の孤島』は、シリーズとは違う切り口の作風のようで気になっています。
研究者としての知見を小説に持ち込む書き手は他にもいますが、大島清昭さんほど怪談と本格ミステリーを対等なバランスで両立させている作家はなかなかいないと思います。呻木叫子シリーズは全4作読み終えたので、次は単独作品にも手を伸ばしてみるつもりです。
読了したものから順次レビューを書いていきますので、またブログに遊びに来ていただけると嬉しいです。

コメント