※本記事はAIを活用して作成し、管理人が内容を確認・編集しています。
本棚の住人、Konohaです。
前回の『忌館 ホラー作家の棲む家』に続いて、三津田信三さんの「作家三部作」から2作目の『作者不詳 ミステリ作家の読む本』をレビューします。この本も再読で、初めて読んだときは★4でした。『忌館』を読み返して三津田さんの原点の面白さを再発見したので、その勢いのまま上下巻を一気に読み返したところ、今回は文句なしの★5になりました。
7つの短編ミステリーと、それを読む”私”たちの身に起きる怪異。ひとつの本の中で何冊ものミステリーを読んだような、ぜいたくな読書体験でした。ネタバレなしで感想をまとめていきます。
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『作者不詳 ミステリ作家の読む本』の評価
『作者不詳 ミステリ作家の読む本』とは
地方都市の片隅に位置する杏羅町。三津田信三は、そこで好みの古書店〈古本堂〉を見つける。そこで奇怪な同人誌『迷宮草子』を入手する。素人が作ったかのような、下手な革装のその本は、「霧の館」という短編をはじめ、7篇の奇妙な味わいの作品が収録されていた。だが、読み進めるごとに、現実の世界で奇妙なことが起きるようになる。三津田は、親友の飛鳥信一郎とともに短篇に隠された謎に挑むのだが……。
2002年に刊行された、作者と同じ名前の”私”が主人公になる「作家三部作」の2作目です。三部作は『忌館 ホラー作家の棲む家』から始まり、このあと『蛇棺葬』『百蛇堂 怪談作家の語る話』と続きます。長く講談社文庫の上下巻で読まれてきましたが、2026年1月に角川ホラー文庫から新しく上下巻で刊行されました(下巻の解説は澤村伊智さん)。私が読んだのは講談社文庫のKindle版ですが、いま手に取りやすいのは角川ホラー文庫版です。
『作者不詳 ミステリ作家の読む本』の見どころ
7つの作中作ミステリーを、1日に1話ずつ読み解いていく構成
『迷宮草子』に収められているのは、館もの、祭りの夜の事件、アパートの毒殺、山小屋で語られる昔話、高校生の惨殺事件、時計塔の転落死、そして同人誌の作り手たちのオフ会と、雰囲気のまったく違う7つの短編です。三津田と飛鳥は、月曜日から1日に1話ずつ読み進め、そのたびに作中の謎に挑みます。短編を1本読み終えると、次はふたりの謎解きパート、そしてまた次の短編へ。このリズムが心地よくて、上下巻の長さを感じさせませんでした。
謎を解かなければ、怪異は終わらない
この本の面白さは、ただの短編集ではないところです。『迷宮草子』を読むと、作中で描かれた出来事が、少しずつ現実の三津田たちの身にも起き始めます。それを止めるには、作中の謎を解くしかない。だから謎解きは「推理ゲーム」ではなく、自分たちを守るための切実な作業になります。ミステリーとしての謎解きと、ホラーとしての怪異が、ちょうど背中合わせになっている構成が見事でした。
解釈が出ては崩れる、多重解決の楽しさ
謎解きパートでは、ひとつの短編に対していくつもの解釈が出てきます。「これで決まりだ」と思った推理に穴が見つかって、また別の解釈へ。刀城言耶シリーズの、仮説を出しては自分で崩していく推理を思い出すような展開で、親友の飛鳥の鮮やかな解釈にはたびたび唸らされました。各話の作者名がどれも読みにくい当て字になっていることや、各話の扉絵など、本そのものにも気になる仕掛けがちりばめられています。
『作者不詳 ミステリ作家の読む本』の感想
最初の「霧の館」から、すっかり引き込まれました。山で道に迷った”僕”が、霧の中で見つけた館に少女と老婆と一緒に泊まることになる話で、普通の人間ふたりしかいないはずなのに、なぜか恐怖を感じてしまう。読み終えたあと、現実の三津田と飛鳥のまわりにも霧が立ち込めて、しかもその霧はふたりにしか見えない……という流れで、「これは面白くなるぞ」とわくわくしました。刀城言耶シリーズを読んでいる方なら、「霧の館」に出てくるある村の名前や登場人物の名前に、思わずニヤリとしてしまうはずです。
7話の中で私がいちばん好きだったのは、5話目の「朱雀の化物」です。高校生グループが泊まった山荘で、朱雀の面をかぶった化物が次々と生徒を襲っていく話で、一見すると犯人は明らかなのに、調べていくと辻褄が合わなくなっていきます。そのあとの現実パートで、三津田が化物に追われながら飛鳥の家まで逃げる場面は、手に汗握る展開でした。そして、謎解きパートで示された解釈には、思わず「そう来たか」と声が出そうになりました。
もうひとつ印象に残ったのが、三津田作品でおなじみの「本の話の脱線」がほとんどないことです。『忌館』では乱歩談義などの脱線を長く感じてしまった私ですが、この作品はとにかく話の展開がテンポよく、短編の謎と『迷宮草子』そのものの謎の両方が気になって、どんどん読み進められました。初読で★4にしていたのが不思議なくらい、再読でははまってしまいました。
ラストは、謎がすべてきれいに片づくタイプの終わり方ではありません。最後の短編を読み終えたあとも物語は終わらず、そこから続く終盤の展開にはぞくぞくしました。そして最後には「この本を読んでいる自分」まで物語の中に引き込まれたような、不思議な余韻が残りました。読み終えた今も、まだ『迷宮草子』の謎について考えてしまっています。
『作者不詳 ミステリ作家の読む本』がおすすめな人
一冊でいろいろなタイプのミステリーを楽しみたい方に。 作中作や、ひとつの謎にいくつもの解釈が出てくる多重解決が好きな方には、ぜひ読んでほしい1冊です。
一方で、次のような方には少し合わないかもしれません。
- すべての謎にはっきりとした答えが出る結末を求める方(最後はホラーとしての余韻が残ります)
- 1本の長い物語にじっくり浸りたい方(7つの短編と謎解きパートが交互に進む構成です)
7つの謎解きを読み終えたころには、きっとあなたも『迷宮草子』の読者のひとりになっているはずです。
よくある質問
前作の『忌館』を読んでいなくても楽しめますか?
物語としては独立しているので、『作者不詳』から読んでも楽しめます。ただ、プロローグで『忌館』の出来事に触れられていたり、『迷宮草子』が『忌館』に出てきた同人誌とつながっていたりするので、刊行順に読むとより味わい深いと感じました。
講談社文庫版と角川ホラー文庫版、どちらを読めばいいですか?
私は講談社文庫版で読みましたが、これから読むなら2026年1月に出た角川ホラー文庫版が手に入りやすいと思います。下巻には澤村伊智さんの解説が収録されています。どちらも上下巻に分かれているので、上下セットで用意しておくのがおすすめです。上巻の最後は続きがとても気になるところで終わります。
ミステリーとホラー、どちらの要素が強いですか?
私は、作家三部作の中ではかなりミステリー寄りだと感じました。7つの短編それぞれに謎解きがあり、推理の場面がたっぷり楽しめます。そのうえで、謎を解かないと怪異が止まらないという枠組みがホラーになっていて、両方の面白さをバランスよく味わえる作品です。
怖さはどのくらいですか?残酷な描写はありますか?
短編の中には撲殺や惨殺といった事件も出てきますが、描写が長く続くわけではないので、グロテスクな表現が苦手な方でも読めると思います。怖さは、霧や赤ん坊の泣き声など、作中の出来事が少しずつ現実に染み出してくる、じわじわとした不気味さが中心です。
おわりに
『忌館』に続いて作家三部作を読み返してみて、三津田さんが「ホラーとミステリーのあいだ」をどれだけ自在に行き来できる作家なのかを、改めて実感しました。7つの短編ミステリーと、それを包み込むホラー。この組み合わせを一度味わうと、ほかの作中作ミステリーでは物足りなくなってしまいそうです。
三部作の1作目が気になった方は、『忌館 ホラー作家の棲む家』の感想レビューもあわせてどうぞ。完結編の『蛇棺葬』『百蛇堂』も再読して、前後編まとめの感想レビューを書きました。三津田さんのほかのシリーズは三津田信三の全作品まとめで紹介しています。
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