※本記事はAIを活用して作成し、管理人が内容を確認・編集しています。
本棚の住人、Konohaです。
『くたばるの小人』で滝川さりさんの既刊をすべて読み終えたので、まだ単独でレビューしていなかった作品も、1冊ずつきちんと書き残していこうと思います。今回は、滝川さりの全作品まとめでは短い紹介にとどめていた『おどろしの森』です。
『あかずめの匣』や『お孵り』のような村の因習ものとは違い、舞台は新しく買ったばかりの一軒家。家族の中で自分だけが怪異に気づいてしまう怖さと、霊能者が怪異に立ち向かうホラーバトルの勢いが同居した、エンタメ色の強い1冊でした。
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『おどろしの森』の評価
『おどろしの森』とは
四人家族の大黒柱である尼子拓真は、新築一軒家を購入し幸せの絶頂だった。だが家にお香のような甘い匂いや女の笑い声がし出し、派手な着物姿まで目にする。拓真は恐怖するが、妻と高校生の娘は何も感じないらしく、不審な目で見るばかり。霊が視えるというガールズバー店員のミヤに尋ねてみるも、何も視えていない様子に絶望する。だが実はミヤは、拓真の呪いの正体に気づきながらも黙っていてーー?恐い。なのに止められない。徹夜覚悟の最凶ホラー・エンタメ!
2020年に角川ホラー文庫から刊行された、滝川さりさんの2作目の長編です。デビュー作『お孵り』に続く作品で、序章のあとは父親の拓真と霊能者のミヤ、ふたりの視点を行き来しながら物語が進んでいきます。シリーズものではないので、この1冊から読み始めても問題ありません。
『おどろしの森』の見どころ
「自分にしか見えない」怪異と、すれ違っていく家族
拓真は、妻と高校生の娘、4歳の息子の4人家族。念願のマイホームを手に入れたはずが、家の中で甘い匂いがしたり、女の声が聞こえたりと、おかしなことが起き始めます。ところが妻も娘も「何も感じない」と言い、霊能者に見てもらっても異常なし。怪異そのものより、誰にも信じてもらえないまま家族の中で浮いていく拓真の孤独が、じわじわと怖さを増していきます。反抗期の娘とのぎくしゃくした関係や、娘自身が抱えている学校での辛さも丁寧に描かれていて、「この家族は大丈夫なのか」とずっと胸がざわついていました。
ミヤという霊能者の存在
もう一人の主人公が、霊が視える霊能者のミヤです。あらすじにもあるとおり、ミヤは拓真に取り憑いたものの正体に気づきながら、あえて黙っています。自分と自分の大切な人さえ守れればいい、他人を助けるつもりはない、というスタンスの霊能者で、正義感あふれるヒーロー像とはまったく違うのが新鮮でした。タイトルの「おどろし」が何なのかも、このミヤの視点から少しずつ見えてきます。ミヤの考え方が物語の中でどう揺れ動いていくのかも、読みどころのひとつです。
終盤の、霊能者と怪異のぶつかり合い
前半の「信じてもらえない怖さ」から一転して、後半は霊能者たちが怪異と正面から対決する、ホラーバトルの色が濃くなっていきます。緊迫感のある除霊シーンは、澤村伊智さんの『ぼぎわんが来る』(比嘉姉妹シリーズ)を思い出すような熱さがありました。じっとりした恐怖だけでなく、手に汗握るエンタメとしての面白さを味わえるのが、この作品の大きな魅力です。
『おどろしの森』の感想
読み始めてまず気になったのが、序章に出てくる男の存在です。ラブホテルで怪異に襲われているこの男がいったい誰なのか、本編とどうつながっていくのかが分からないまま一章に入るので、最初から「これはどこかで効いてくる伏線だな」とわくわくしながら読み進めました。
一章からは拓真の家族の話になり、マイホームを手に入れた幸せな空気が、少しずつ怪異に侵されていきます。ただ、正直に言うと前半でいちばん辛かったのは怪異よりも家族の描写でした。拓真と妻や娘とのすれ違いがどんどん大きくなっていき、娘は娘で、友だちとの関係の中で無理を重ねて追い詰められていく。どんよりと重たい場面が続くので、読んでいて胸が苦しくなるところもありました。
そこに、別の角度から光を当ててくれるのがミヤの視点です。ミヤがなぜ黙っているのか、拓真に何が起きているのか、少しずつ情報が出そろっていく過程がとても面白く、章が進むごとに「そういうことだったのか」と見え方が変わっていきました。そして終盤、物語が一気に動き出してからは、もう止まりません。あらすじの「恐い。なのに止められない」という言葉どおり、霊能者と怪異のぶつかり合いを夢中で読み終えていました。
『あかずめの匣』のように「呪いの条件」を推理させる仕掛けを期待すると少し方向性は違いますが、そのぶん、家族ドラマとホラーバトルを一冊で楽しめるエンタメ作品になっています。途中は辛い場面もあったものの、読み終えたあとに残ったのは「面白かった〜」という素直な満足感でした。
『おどろしの森』がおすすめな人
新築の一軒家を舞台にした、家族と怪異の物語を読みたい方に。 霊能者が怪異に立ち向かう、エンタメ寄りのホラーバトルが好きな方にも、自信を持っておすすめできます。
一方で、次のような方には少し合わないかもしれません。
- 静かにじわじわ怖がりたい方(後半はバトル色が強く、勢いで読ませるタイプです)
- 家族のすれ違いや、学生の人間関係の辛い描写が苦手な方(中盤はかなり重たい展開が続きます)
『ぼぎわんが来る』の除霊シーンにぞくぞくした方なら、この1冊の後半はきっと夢中で読めるはずです。
よくある質問
『おどろしの森』はどのくらい怖いですか?
前半は、家の中の匂いや声、自分にしか見えない女の姿といった、じわじわ系の怖さです。後半は霊能者と怪異のバトル色が強くなるので、怖さよりも緊迫感や勢いのほうが前に出てきます。私が読んだ滝川さりさんの作品の中では、怖さは控えめで、エンタメとしての読みやすさが際立つ1冊でした。
ミステリー要素はありますか?
「なぜ拓真にだけ怪異が見えるのか」「序章の男は誰なのか」といった謎が物語を引っぱっていき、真相が見えてくる過程には謎解きの楽しさもあります。ただ、本格ミステリーのような推理を楽しむ作品ではなく、あくまでホラーが主役です。謎解き寄りの滝川作品を読みたい方には、『あかずめの匣』のほうが合うと思います。
読後感は重たいですか?
中盤は家族のすれ違いや娘の辛い状況が続くので、読んでいて気持ちが沈む場面はあります。それでも、読み終えたときの後味は悪くありませんでした。ホラーは好きだけれど、救いのない結末は苦手という方でも手に取りやすい作品だと思います。
滝川さりさんの作品を初めて読むなら、この本からでも大丈夫ですか?
シリーズものではないので、この本から読んでも問題ありません。テンポがよく読みやすいので、入り口としても向いています。ただ、因習ホラーと謎解きを組み合わせた滝川さりさんらしさをいちばん味わえるのは『あかずめの匣』なので、迷ったらそちらから読むのもおすすめです。
おわりに
『お孵り』では村の因習、『おどろしの森』では新築の一軒家と家族、『くたばるの小人』では学校といじめ。改めて振り返ると、滝川さりさんは作品ごとに舞台も怖さの種類もがらりと変えてくる作家さんだと感じます。そのなかで本作は、ホラーバトルの勢いでいちばん楽しませてくれた1冊でした。
滝川さりさんのほかの作品が気になった方は、滝川さりの全作品まとめもあわせてどうぞ。私のいちばんのお気に入りは『あかずめの匣』の感想レビューで紹介しています。
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